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モアレな「しましま」で、橋を点検できるようになるってさ

「モアレ縞」というちょっと聞き慣れないものを使って、橋の安全性がわかる技術を、日本の産業技術総合研究所が開発しました。

 コンクリでできた橋でも、大型トラックやトレーラーが通ると地震のようにゆれますよね。橋の状態に異常があると、このゆれ方は当然変わってきます。つまり、トラックが通ったときの橋のゆれ方から、橋が安全かどうか、といった状態がわかるわけです。

モアレ縞を利用した画像処理で、このゆれ具合がわかるようになりました。

産総研:デジタルカメラで撮影するだけで橋のたわみを計測する技術の開発

 

目次

 

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1.従来の技術

従来は、車が通った時のたわみの測定に「リング式変位計」というものを使っていました。リング式変位計は、簡単に言うと、薄い金属の板を曲げてリング上にしたものです。

橋と橋の下の河原などの地面を図のようにつなぐと、重い車が通って橋がたわんだときに、リング式変位計(下図の赤丸部分)が変形します。歪ゲージというものをもちいて、このリングの変形を電気信号に変換して、変形した度合いを測定します。

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 ですがこの方法、なかなかに大変です。まず、橋からワイヤーを垂らすのが大変。垂らしたままにしておいたら危ないからすぐに取り外さなければですし。

また、橋の下が川や海だったりすると、この方法は使えません。


2.今回の技術

2-1.モアレ縞ってなんだ

測定方法についてお話する前に、タイトルにもあるモアレ縞ってなんだ?というところからお話します。

網戸と、レースのカーテンやすだれを通して、外を見たとき、不思議なしましま模様が浮かびあがっているのを見たことはないですか?以下の写真のような状態です。

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My daily life: 2012年4月より引用。
このしましま模様のことを、モアレ縞(しま)と呼びます。このように、同じくらいの目の細かさの方眼紙模様(網戸)やボーダー・ストライプ模様(すだれ)が重なったときに、模様の細かさの微妙な差や、位置関係に応じて、このモアレ縞が生じるわけです。

 

2-2.モアレ縞でこうやって揺れを測る

今回の技術では、このモアレ縞を使って橋の揺れ具合を測ります。

橋の、ゆれを測りたいポイントに、ボーダー状の模様を書いた板(上の例でいうすだれに相当)を固定します。そして、その板をビデオで撮影します。

あとは、取った映像をコンピュータで画像処理をして、上の例でいう網戸に相当するパターンを合成します。すると、コンピュータの中の画像データにモアレ縞が現れます。

このモアレ縞の動きを分析することで、橋がどのくらい揺れているか、高い精度でわかる、というわけです。

 

3.今後への期待

じつは、車の走行時の橋のたわみの診断というのは、国土交通省が出している「橋梁定期点検要領(平成26年6月)」には記載のない項目です。
(参考)http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/pdf/yobo3_1_6.pdf


つまり、普段は車の走行時の橋のゆれは測定しないようです。では何を点検するかというと、コンクリのヒビ割れやら橋の定常的なたわみなどを基本的には「目視」で点検することになっています。


目視、つまり、人の目で橋を観察して、ヒビ割れやらたわみの異常やらが無いかどうか確認する、というのです。確認する人も大変ですし、明らかにたわんでいると、見てわかるようになってからでないと診断できない可能性もあります。

 

今回の技術で設置するようなボーダー模様の板は、常設することも可能でしょうし、そうすれば、河川状況の監視と合わせて、橋の揺れを常時監視する、なんてこともできるかもしれません。そうなったら、橋を通るということが、より安心になりますよね。